経営コラム
新型コロナウィルス出口戦略での廃棄物処理業経営7
これまで続きました本編「新型コロナウィルス出口戦略での廃棄物処理業経営」の最終回は⑥のエンゲージメントについてです。
好景気時には人材不足により採用難時代となってきましたが、不況期は当然その逆となる人材充足感時代となっております。当然に中小企業にも、また廃棄物処理業にも採用のチャンスとなっています。
この半年を振り返っても私の支援先でも不足していたドライバーの応募や中間処理場のスタッフにも応募が来つつあります。ところで、このような時だからこそ忘れてはならないのは逸材の流出です。不況期は人々は不安になりやすい時でもあります。ましてや先の見え難いコロナ禍にあっては報道の影響もありますが、報酬の不安、自社の業績への不安、退職者が出ることへの負荷に対する不安、将来に対する不安等々を持ってしまいがちです。このような時だからこそ、エンゲージメントは不可欠になっていくのでしょう。
エンゲージメントとは、様々に解釈されますが会社に対する愛着や思い入れ、また個人と組織が一体となり貢献しあうこと、働くことに対するモチベーション等でもあります。つまり、自社で働く意義を従業員が持てるようになる状態でもあります。
人は将来に不安を覚えると退職と転職を考えるようになってしまいます。これは様々な要素からなっており、人の面ではこの社長の下で、この上司の下で、この仲間と一緒にやり続けられるのか?等もあり、また報酬面でもこの賃金で、また数年後の報酬の先行き、伝え聞く他社と比較して等もあるでしょう。そして仕事に対しても、このしんどい仕事をこの先もやり続けるのか、ずっと同じことをやり続けるのか、人も減って更に負荷が掛かってくる、減少していく仕事でウチは大丈夫かと、ネガティブなものも増える時もあります。過去に自社を退職した人を思い浮かべてください。振り返ると惜しい人材の流出もあれば、また退職時に伝えていたことと違う転職であったり、未だに原因不明の時もあるでしょう。ただ共通していることは、これらの不安の結果でしかありません。不安を解消させられなかったことが、退職の根本の原因でもあるのです。
船井総研では、「仕事好き、会社好き、仲間好き」とするキーワードがあります。これは採用面でも大事にしている考えでもあり、私もこの3つを持てていれば不安も解消されると信じています。
先ず仕事が好きであること、これがスタートでもあるのでしょう。働くことが嫌な人には、手の打ちようもないのではないでしょうか。そもそも働く人が嫌な人に、人参をぶらさげたり、また理念を説いても全く響かないでしょう。この業種が、この仕事が好きとなる際に、廃棄物処理業は不利になりやすくもあります。例えば、子供の頃から憧れの職業だった、この仕事につく為に勉強をしてきた、等はさすがに少ないことも事実です。これは私も悔しく、いつか憧れの職業や業界にしたいと真に思っております。
しかしこの現実下において諦めていても前に進めません。私のクライアントでも組織力診断の従業員意識調査をしていくと、社会的意義のある仕事をしていることは多くの割合で認めていました。しかし自らが会社への誇り、仕事への誇りとなると薄れていった結果もあります。この理由は不明ながら各社とディスカッションしながら出た答として、日常との乖離があるのではとなってきました。環境を守る仕事であり、世の中に無くては困る仕事であることも充分に理解している。しかし自らが毎日していることが、それだけの仕事となっているかを合致できていないのではないかということです。
中間処理場スタッフならば、目の前のゴミを片付けても次から次へと入り続け、来る日も来る日も終わりが無く、帰る時にも既に満載となっている。ドライバーにすると、御礼を言ってくれる顧客もいれば、雑に扱われる顧客もいたり。感謝の言葉を聞く比率よりも、そうでない比率が多いからではないかと想定してきました。だからこそ外部の声を聴かせること、会社への評価、自らの仕事への評価を見える化しなければなりません。社長や営業から顧客から褒められたりしたことを伝えることは勿論ながら、顧客アンケートも然りで来場者アンケートも然りです。自らの仕事が評価されていること、感謝されていることを認識して貰うことは大事なのでしょう。
会社好きも同様かもしれません。我が社が世間から、どのように思われ評価されているのか?を認識して貰う必要は多いにあります。消費財の商品ならば知名度や実績は解り易いものでしょう。テレビCMも当然表面化していきます。しかしCMを初めとする広告では、一般消費者に投げるものが圧倒的で、BtoB企業を中心としたブランディングや採用を意識したものは費用対効果でも相当に苦戦をするものです。このブランド創りというものでは、大手廃棄物処理業も取り組むものの、それに成功したと言える企業は限られているようにも率直に感じます。では、会社好きになって貰う為には何をすべきかとなると思います。前述の顧客評価の伝達の仕組みをしたうえで、次回それをお伝えしていきます。