経営コラム
新型コロナウィルス出口戦略での廃棄物処理業経営8
今回は、⑥エンゲージメントの後編となります。
会社に対する愛着や思い入れ、また個人と組織が一体となり貢献しあうこと、働くことに対するモチベーション等、自社で働く意義を従業員が持てるようになる状態を目指すこと、何かをすれば劇的に変わるという特効薬もないものの、絶対に諦めず取組続けなければならないことでもあります。
前編にて「仕事好き」と「会社好き」での外部評価把握に続き、「会社好き」のなかで押さえて戴きたいポイントとして、会社においての自分の「存在意義」と「必要性」となります。社員として与えられた役割を担っているということは、不要の人などは当然いないものです。各人が貢献をしてくれているから、会社も価値を果たし社会に貢献をしています。しかし、そこにおいての自分の必要性認識を常に持ち続けることは難しいものです。トップ営業のように数値の貢献、社内で自らを除き誰にもできないことで成果の上がる貢献等が解り易いもののポジションならば良いのですが、そこに該当する人は限られてしまいます。工場での選別やドライバーとなると、個別には必ず違うものの、担当が変わっても上手くまわっていくことは多いもので、自分の必要性は見失いがちになってしまいます。ましてや多忙な毎日に忙殺されていると、益々存在意義が見えなくなっていくものです。その日を終えることに一生懸命であり、他のことを考えていられないのが本音でもあるのでしょう。
先ず見直して頂きたいことに、個々の目標設定です。目標管理は昔から取り組まれていることは多いと思いますが、これにどれだけの時間を掛けて、目的を達成できているでしょうか。人によっては高い目標や逆のケース、数人が同じような目標、前年と変わらず形骸化した目標、達成して当たり前の目標、達成しても何も反映されない目標、達成しても会社ビジョンには影響しない目標、更に言えば多くの人が忘れてしまうような目標になっていないでしょうか?この精査を失敗すれば、目標管理は形骸化され、ただ制度として表面化されているだけの、やっているだけのものとなります。
つまり目的が見失われているのです。目標達成において、先ずその職務においてビジョン達成の為、真に追求されることが明確でなければなりません。ジョブ型雇用という言葉が最近耳にすることも増えていると思いますが、ある意味では人に職をつけてきたこれまでと違い、職に人をつけるとも言えます。廃棄物処理業においてジョブ型が適しているや否や云々ではなく、ここで考えて戴きたいことに、ジョブディススクリプションと言われるものです。それは、職務のポジション名、目的、責任、内容と範囲、求められるスキルや技能や資格が明確化されているものです。同様のものが、それぞれの職務に設定されており、達成することで会社のビジョンに近付くものとなっているでしょうか。
これを現在の個々にあわせ、目標に近付ける為の作戦が明確になっていることが、目標管理のスタートでもあります。そして何よりも重要なことは、それを達成する為の援助であり、会社と上司がその人の為に真剣に追いかけ続け、達成の為のPDCAが正しいことです。目標は作ったけれどそのまま、そして時期が来た際に達成したか否かでは、とても重要には思えません。それ故に先ずその目標達成の重要性を共有化していき、その動機付けが高まるまでは何度も繰り返して話合わなければなりません。
真剣に目指そうと火が灯された時からがスタートです。そして大きな目標を達成する為の月次のマイルストーンを共有し、毎月必ず一緒にそれを見る時間を持ち、次のPDCAへとまわす時間の機会をつくりましょう。1ON1 MEETINGの制度も拡がりつつありますが、そこでの機会の精度が個々の目標達成と成長を決めるといって良いでしょう。達成を真に願うようになった人にとって、その達成は本当に嬉しいものとなり、会社への貢献も認識できます。そして何よりも、真剣にそれをサポートしてくれる会社と上司への信頼は当然に厚いものでもあります。これを全社員が出来るようになった時こそ、エンゲージメントが高い組織に近付いていると思います。
個々の人生目標は様々で、更に働くことへの目標は少ない人の方が多いのが現実でしょう。そのなかで、そもそも論となる会社が良くなれば個人も幸せになれるだけを伝え続けても、正しくても響かないものとなってしまいます。会社を好きになれ、と言い続けることで好きになってくれれば簡単ですが、人の恋愛同様に片思いに終わってしまうものでしょう。正しい動機を前提とした達成の為の支援が、最終的に会社好きへと昇華していけると思います。しかし、これはあくまでスタートであり、心が変わり始めた段階でしかありません。しかし聞く耳を持てば、納得スピードも速まっていきます。
今まで上滑りになっていたこと、また右から左へ抜けていったことが、ひとつひとつを受け容れられることも増えていくでしょう。その小さなスタートが、社内に拡がっていく筈です。理解を間違って捉える人、正しくない考えの人、それらを翻訳や変えていく役割にもなっていくのです。それが大勢になった時が文化となった時です。多くの人が会社好きになれば、逆の人よりも多ければ、会社好き社員の会社へと変わります。変わらない人には居心地の悪い場となり、またそうすることで新たに入社した人には当たり前となり、更に言えば採用の段階から変わってくることでしょう。
会社好きにおいて、ついつい福利厚生や条件面に待遇と目に見える要因解決にいきがちだと思います。しかしその解決は、先ず心の面の解決が終わってから効果も発揮するものとなるでしょう。勿論これらも同時進行で取り組んでいかねばならないのですが、表面的なものだけに囚われることなく、急がばまわれで取り組んで貰えればと思います。
そのうえで、仲間好きなのです。仲間は好きだけど会社は好きではないというのは、本来ありえないことです。それは間違った仲間好きであり、単なる仲良しの感覚だけでしょう。会社としてのフィールドありきの一緒にやっていく仲間なのです。プライベートでの仲間ではなく、一緒にビジョンを達成する為での仲間が会社での仲間好きです。野球に例えるならば草野球ではなく、プロ野球で一緒に優勝を目指す仲間なのです。この仲間と一緒ならばビジョンが目指せる、尊敬する先輩やお世話になった先輩、超えていきたい仲間、刺激を受ける仲間、前向きな姿勢に引っ張られる仲間、これは偶然に揃ったわけでなく、仕事好きと会社好きが大勢となることで醸成されていったものでしょう。
繰り返しますが、これまでのことは簡単にはいかないものです。しかし、絶対に諦めず取組続けようとするからこそ、一歩でも二歩でも近付いていけるのだと思います。折れずにブレずにやり続けられること、大切ですね。