経営コラム
廃棄物処理業の脱炭素経営⑩「脱炭素経営にて組織を変える」
「脱炭素経営にて組織を変える」の続きです。
(3)脱炭素をパーパスへ
パーパス経営という言葉が、近年は多く聞かれることになったと思います。「自社は何故存在するのか?」とする存在意義や、自社と社会との関わりについての社会的価値、社会に対する志を明確にして、それを経営の基軸に置くものでもあります。これには経営層と従業員が議論し、結果としての共有と共感が必要となっていきます。そして企業経営においても、これまでステークホルダーに対して、短期的収益性を意識してきた資本の考えから、社会が持続可能性を求める考え方への変化にも繋がってきていると思います。廃棄物処理業においてもパーパス経営が必要となっているのは、従業員の多くが社会的意義を認識しているのに、それが自社で働くことの意義として合致していないことが多く見られるからでもあります。、
これは会社としての視点だけでなく、拡がる社会不安の中で従業員自身が「何故、この会社で働くのか?」「何の為に働いているのか?」と問い、その答と自社のパーパスが一致させることが、会社の収益性にも繋がっていくこととして、企業価値向上としても重要になっているのでしょう。その人にとって、生きる目的がパーパスならば、会社のパーパスを達成させることを一緒に目指せることで、働くことへの価値が大きく変わり、
実現したい未来について、個人としての夢を実現する未来は夫々にあると思いますが、実現したい未来の社会となると、今よりもより良い社会であることを望むのではないでしょうか。しかし現実の社会では戦争も起こり、エネルギーの不安定さやサプライチェーンの課題まで浮き彫りになっています。加えて気候変動における影響が現れてきており、未来の社会が現状の延長では今よりも決して良いものにならないことが解ってきています。しかし、その未来について自分自身が何かできるかと考えても遠く大きな問題でもあり、自らでの行動での変革を難しく感じがちです。それを企業活動で変えることが出来、その役割の一部を働くことで担えるならば、新たに働く楽しさや充実感と目的が生まれていくことになります。
しかし決して忘れてはならないことは、経営にとって社会性の追求が収益性であり、つまり社会性と収益性を両立させることでもあります。パーパスとして脱炭素は重要なテーマではあるのですが、その達成の為に、如何に企業活動を通して収益を上げていくことが重要な観点です。脱炭素経営の中には、このパーパスが定まっていることが前提であり、そのパーパスを達成する集団が組織にもなっていきます。それ故に未来型組織としては、このパーパスが社内に浸透している組織でもあります。そして大切なことは浸透ではなく、共感している社員で構成されている組織であることです。採用から脱炭素実現訴求で取り組んでいけば、当然入社の段階から思いは一致しやすく、また入社後も周囲が皆同じ考え方の為に深い共感の維持も可能ですが、既存の組織に展開しようとすると当初は捉え方にも差が出てくるものとなります。だからこそ、脱炭素経営に取り組む際にパーパスの社内展開には、時間と工数も掛けて丁寧に行い続ける必要があります。そして当初は小さかった共感の輪が、次第に大きくなることで必ず加速するタイミングも訪れていきます。そうなれば、脱炭素経営を達成できる組織が構成されていき、取組の精度とスピードも上がっていくことでしょう。夫々が指示や命令で動くのではなく、企業と自らのパーパスを達成する為に動くこと、働くことは生産性での変革は勿論、企業文化でさえも変えるものとなっていきます。脱炭素を軸としたパーパス経営に、是非取り組んで欲しいと思います。