経営コラム
廃棄物処理業の脱炭素経営⑥「ウチの会社には関係ない」の間違い5
前回から続く、「ウチの会社には関係ない?」の間違い、についての続きです。
⑥地域に貢献できるのか?の続編で、輸入原材料の課題についてです。
近年はバイオマス木質専焼、バイオマス石炭混焼の実例が近年増加しており、またFIT法に基づき、50MW、75MW、112MW 等の比較的大規模なバイオマス専焼プラントが数多くなり、大型になるに従い熱効率が30%台半ばと高まり必要燃料量が低減しております。また、これらの例では国産材に加え、輸入PKSや輸入木質ペレットを長期調達しているケースも増えております。しかし木質バイオマスの輸入も課題が多くあることも事実です。
2017年の段階で需要は1,400万トン強で、輸出国の1位はアメリカ(500万t)、2位はカナダ(220万t)、3位はベトナム(160万t)となっています。輸入国では、1位イギリス(680万t)、2位韓国(240万t)、3位デンマーク (230万t)、日本も50万tと5位となっています。2027年予想の世界需要は3,600万tとなり、1位イギリス(1050万t)、2位日本(900万t)、3位韓国(820万t)と、特に木質系バイオマス発電に補助金のある日本や韓国での需要増大にて、アメリカのペレット増加が見込まれています。
アメリカやカナダ、ロシア、ベトナムをはじめとする東南アジア、オーストラリアなどからの輸出が急速に拡大する見込みです。アメリカでは世界最大の木質ペレット供給会社であるEnvivaが南東部で生産を行っていますが、原料の80%は全木を使ったもので、その半分以上が炭素貯留能力の高い湿地林から伐採されている旨を発表されています。同社は、2030年までに操業からの排出ネット・ゼロを達成するとの目標を提示しています。アメリカ産ペレットの多くを輸入しているイギリスDrax社は、自社の石炭火力発電所の燃料を木質バイオマスに転換することにより、年間10億ドル以上の補助金を受け取っています。
カナダの木質ペレットはその約80%がブリティッシュコロンビア州から輸出されており、主たる輸出先はイギリスと日本ですが、パルプ産業や輸出用の燃料ペレット生産で温帯雨林が減少してもいます。ペレット需要の拡大により全木からのペレット生産が増えているため、グリーンカーボン貯留源が失われている上に、絶滅が危惧されているマウンテンカリブーの生息地や先住民族の生活圏が脅かされるなど、生物多様性や地域住民へもネガティブな影響にも及んでいるようです。
一方EUでは、2018年に改正のEU再生可能エネルギー指令(EU RED2)により、森林由来の木質バイオマスについて、持続可能性基準への適合が義務化されました。①化石燃料使用時に比べて十分にGHGが削減されているのか(栽培・加工・輸送・燃焼の各プロセス及び発電プラントの効率も考慮に入れた基準値との比較)、②土地利用に関して、炭素蓄積を減少させず、生態系や生物多様性を維持し、持続可能な生産が行われているか、③原料について、記録を遡ることが可能で、正しい管理がなされているかのトレーサビリティがある等が盛り込まれています。
固体バイオマスについてのGHG削減基準では、2021年以降稼働の発電施設を対象に、化石燃料比で70%の削減義務付されています。そして2021年7月14日、EUは2030年に温室効果ガス55%削減を実現するための政策パッケージ「Fit for 55」を公表。2030年の再生可能エネルギーの目標は、最終エネルギー消費ベースで40%に引き上げられ、排出権取引制度の対象業種拡大、国境炭素調整措置の導入、そして2035年までに新車の排出ゼロ化が示されました。2018年に改正された再生可能エネルギー指令(以下、REDⅡ)7月から完全施行を迎えるというタイミングで、早くも次の改定案(以下、REDⅢ)が示されたのです。
改正案(RED3)にて、2025年以前に稼働した全ての施設にこの基準が適用されることになっており規制は段階的に厳しくなっています。森林からのバイオマス燃料の供給については、廃棄物ヒエラルキー4およびカスケード原則を考慮して、製材用・合板用丸太のエネルギー利用を支援してはならないとされました。・日本でも経産省にて、先行制度(EURED2)にならって、発電事業者等からライフサイクルGHG試算結果等を収集の上、更に検討を進めている現状でもあります。
近年の木材需要も需給バランスに影響が出ています。アメリカの住宅着工戸数(戸建て計)は、コロナ禍による在宅需要の増加と住宅ローンの低金利により、2020年5月から急増しています。また2021年3月に 173 万戸(年率換算)を記録し、同7月は、前月比▲7%減の 153 万戸となりました。2020 年末から、アメリカでの輸入急増とコロナ禍に伴う港湾処理能力の低下等により、北米にコンテナが滞留して、アジアでコンテナが不足。海上輸送運賃が急激に値上がり。
本年7月は、欧州発が横ばいとなる一方、米国発は依然として上昇しています。EU では、コロナ禍により、昨年春に建設活動が急落したが、夏以降は回復して、以後は堅調に推移しており、中国では、木材需要の増加が継続。過去 10 年で、針葉樹丸太輸入量は 1.8 倍に増加。世界各地から、木材を買い集めています。
世界的にも木質チップの需要が増加のなかで、安定的に安価で国内材を活用できるならば、それを求めている事業者は多いものです。安価に安定的に国内材供給について、次回に続きます。