経営コラム
収集運搬のDX化④「ドライバーの顧客情報管理」
前回から続く、収集運搬のDX化についてです。
今回は「ドライバーの顧客情報管理」となります。
産廃でも一廃でもドライバーが収集運搬に伴う顧客情報に関して、過去から情報活用は各社取り組まれてきました。一般廃棄物ではルート回収のなかでコース設定されてしまうと、その担当者以外では顧客ルールの継承が難しいことも多かったものです。時間指定だけでなく細かいところでは、サイン有無、声掛け有無、倉庫の鍵、伝票のサイン、車輛停車位置、スーパーでの計量や伝票発行、等々と個別ルールがあるものです。更に言えば、月極として設定している重量も各社にあり、その重量違いは採算面の生命線でもあります。結果、複数ルートを走れる人が重宝されるものの、一方で大都市圏での夜間回収等では、その特殊性からも代替され難く固定化しがちとなります。そういったルート別の顧客情報を搭載したソフトもあったのですが、先の配車システム等との連動が悪く、また端末も含め煩雑になりがちでした。
産業廃棄物では、箱の設置等では情報の一元化し易かったのですが、液モノやスポット等での注意事項は多岐に渡り、また数年に一度の仕事等ではその情報を遡ることも煩雑になることも発生しています。また、地図情報も欲しいのは、構内での案内や目的地近隣での地図が必要であり、営業が取得した地図では不十分であること、ドライバーが替わる度に調べなすことや周囲の人に確認をすることも多いものです。
これらの顧客情報が紙やドライバー間でのやり取りで行われていること、これも隠れたリスクでもあると思います。
先ず、これらの対応するソフト環境が大きく変わっていることを認識して欲しいと思います。
これまでは、展示会等や業界誌での情報や同業他社情報等でしか知らなかった、運搬関連のソフトですが、DX化によって、それがもっと身軽に安価なものへと変わっています。専門のソフトでしか検討できず、また新たに構築を依頼すると莫大な費用となっていたものが、既存の組み合わせだけでも出来るようになっています。解り易く言えば、スマートフォンのアプリ同様に、既存のERPやCRM、SFA等パッケージに幾つかのアプリと無料ツールを組み合わせるだけでも、前述の一廃や産廃のドライバーが使う顧客情報管理も入れることが可能になりました。勿論最後の遣い易さのみは、そのアプリメーカーを得意とするベンダーに開発を依頼すべきですが、それでも僅かな価格で構築ができてしまいます。
また、どれだけの精度を求めるかの視点も重要となっていきます。あれも欲しいこれも欲しい、これがあると便利等が浮かぶことは良いことなのですが、それをソフト会社に依頼すれば「できます」の返事とともに高額の見積が上がってくるでしょう。場合によっては、更に便利な付加機能も提案してくれるかもしれません。この精度の深さは再考して頂きたい部分でもあります。苦労をして時間を掛けて作り込んだものが、このIT技術スピードは恐ろしく早く陳腐化してきたものです。数年も経たずに既存のフリーソフトやアプリでも可能になることが増えており、一方でソフト会社と自社構築したものは手間の掛かるものへと変わっていることが散見されます。そして保守料と更新の費用と見えない工数が、却ってコスト増になることもあります。だからこそ、100%を求めないで欲しいと思います。今の市場にある技術を遣い、開発面を極力少なくして出来る方法を見つけることが重要でしょう。
ハードも同様で、例えば過去は専用端末をドライバーに持たせるケースが多かったのですが、ご承知の通り今はスマホや市販のタブレット活用が主流となっております。これによって、バージョンは直ぐに更新も出来て、情報管理やセキュリティ面でも容易となっていきました。ソフト面でも無料のgooglemapだけでも進化しており、過去に出来なかった活用が容易になっていることも増えています。いまの技術で求めたいことにどれだけ近づけるかが重要となっていくでしょう。費用を掛けずとも、何もしないことよりも大きな改善が生まれることも認識ください。
一方で取り組みには、注意が必要となります。これはデジタル化の大原則でもあるのですが、既存の「やり方」をベースに構築をしないことです。デジタルは業務改善の手法でもあり、業務改善を進めるなかでのツールでもあるのです。それ故にドライバーの顧客情報管理には、本来不要な取り決めやルールの見直しが大前提となっていきます。取引開始の際には必要であったが不要になっていること、いつの間にかルール化されていることもあるのではないでしょうか。配車の時と同様に、その見直しが最優先となります。業務を改善する為での取組であり、それによる費用対効果が当然求められます。
その際にドライバーの引継のし易さや、経験年数の浅いドライバーでも早期に対応できることは大きなメリットではありますが、仕事のやり方が変わっていなければ、まだまだ無理が潜んでいるものです。究極は顧客情報がゼロでも可能にすることであり、その過程での最低限の情報に絞り込むことが目指すことでもあるでしょう。顧客との取り決めだから変えられない、は瞬間に思考を失う恐れもあります。何故それが必要であったのか?今でもそれが本当に必要か?代替する方法は無いのか?営業だけが考えるのではなく、顧客と確認しながら改善を考えねばなりません。それが収益を生み出すものになっていき、また競合との差にもなっていくことでしょう。
ドライバーが知るべき顧客情報管理について、費用を掛けずともデジタルでの改善が可能です。是非、取り組んで頂きたいと思います。