経営コラム
収集運搬のDX②「デジタルツールに踊らされていないか?」
前回から続く、収集運搬のDX化についてです。
今回は「デジタルツールに踊らされていないか?」となります。
最初に考え方を再確認しますが、DXは手段でありツールであるということです。つい間違ってしまうことは、DX導入を目的化することでしょう。
DXが毎日のように新聞でも目にすることは増え、書店に行けば更に平積みコーナーが目にとまります。同業他社の導入も聞こえ、社員の一部から声も上がることもあるでしょう。そのような時に出入りのOA商社から、DX化としてのソフトを提案されることもあれば、DMやメルマガで情報が届くことがあります。初めて知ったソフトやツールであり、詳しくは解らないものの何か便利になりそうな気がする、また初期コストはそこまで掛からない、とのことで社内のITに詳しそうなメンバーに相談をするも経営判断として明確に答を出せないままになっていることは無いでしょうか。
DXが目的化している時でもあるのでしょう。勿論、経営者のITリテラシ―の課題も問題として潜んでおり、そのリテラシーのレベルに比例して会社のデジタルレベルとなっていることが多いものです。
本当のDX化はビジネスモデル全般を変えていくものにもなっていきますが、多くの中小企業にとっての現在DX化で取り組むべきことは業務改善です。シンプルに業務改善を進める手法として、DXが遣われることもあるということです。
つまり、たまたま知ったソフトやツールについて導入検討をしようとしても、それでは答が出ないとなるわけです。
そして収集運搬を効率化したい、利益改善をしたいとなった際では、最初から収集運搬関連のツールを探してはいけません。業務改善をするのですから、どのような場合も共通していることは、無理無駄ムラの改善でもあるでしょう。業務フローから見つめ直し、ECRS(Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化))の視点で課題解決を図ることでもあるのです。
先ず現在のやり方の課題について、気付かないうちに蓄積している筈です。例えば、過去の価格設定と契約内容が現在のやり方では赤字となっていること、ハウスメーカーの㎡単価設定がそのままであることや当初想定エリア外が増えていること、また回収ロッドがいつの間にか小さくなっていること、boxやコンテナの設置料やリース料が有耶無耶になっているもの、酷いものでは想定量を前提に見積したものが実績ではかけ離れているケースも見られます。これらは顧客側との交渉も可能で、むしろ気付いた段階で即の行動が無ければ収益性を失い続けてしまいます。
一方で厄介なことは自社に潜む課題ではないでしょうか。多くは氷山のように隠れてしまっているケースです。営業担当も知らぬ間に、また配車担当もいつの間にか、ドライバーにしてみると先輩や同僚から聞いたことや引き継いだことが、意図せぬ方向になっている時でしょう。ある時、顧客から現場で要望のあったことが、営業も介さずにルールとなっていること、また配車の都合で先方に依頼したことがいつの間にか当たり前になっていたこと、ドライバーが良かれと取り組んだこと、また最悪のケースではドライバーが自身の判断にていつの間にか法に触れるようなことを実施しているケースもあります。
これらのように、やり方の課題が整理や解決しないなかで問題点を見ようとすると、無駄な解決方法へと辿り着きかねません。その課題を解決するシステム開発や、ツールやソフトを導入する際にマッチするものが見つからない、またカスタマイズが必要となることです。
残念なことは、経営側がドライバーを楽にしてあげたいとの思いで取り組むデジタル化が、問題の解決にならないことではないでしょうか。つまりデジタルから入るのではなく、業務の根本となる課題解決が先ずありきとなるわけです。
DX化はとても必要な発想でツールでもあります。しかし、表面上のDX化には問題が多く潜んでおり、その進むべき正しいプロセスを積んで頂きたいと思っております。DXは重要な経営判断となっています。システム担当者に任せるものではなく、経営者自らが取り組むテーマとなっているからこそ、是非正しいDX化に進んで欲しいと思います。
次回の収集運搬DX化に続きます。